大相撲「序二段」の実態とは?給料事情や過酷な生活・昇格の壁を徹底解説
日本相撲協会が発行する番付表のなかで、ひときわ細かな文字がびっしりと並ぶ階級が「序二段」です。テレビ中継で目にする華やかな関取(十両・幕内)の土俵とは異なり、午前中の静まり返った国技館で繰り広げられる土俵には、将来の横綱を目指す若手から怪我と闘い続けるベテランまで、多様な力士たちの泥臭い生き様が刻まれています。
大相撲において最も力士数が多く、関取への道のりで最初の大きな壁とも呼ばれる序二段。本稿では、一般にはあまり知られていない無給の実態や場所手当の内訳、早朝から始まる部屋での過酷な生活、そして三段目との待遇格差に至るまで、現場のリアルなデータを交えて徹底解説します。
📌 【この記事の重要ポイントまとめ】
- 要点1:序二段は月給制の「関取」ではなく無給扱いであり、年6回の「場所手当(1場所約8万8,000円)」と衣食住の現物支給で生活している。
- 要点2:番付表のなかで最も在籍人数が多い階級(約200人前後)であり、本場所15日間のうち7番の取組で4勝以上の「勝ち越し」を掴むことが昇格への絶対条件となる。
- 要点3:早朝からの稽古やちゃんこ番・雑用をこなす下積みの日々が続く一方、怪我で陥落した元関取の再起のドラマが生まれる場でもある。
【番付の基礎知識】大相撲「序二段」の人数と日本相撲協会番付表での位置づけ
大相撲の番付は、上から幕内(横綱・大関・関脇・小結・前頭)、十両、幕下、三段目、序二段、序ノ口の6つの階級に分かれています。このうち十両以上がいわゆる「関取」と呼ばれ、幕下以下は「力士養成員」という修行中の身分に位置づけられます。
序二段は、前相撲を経て序ノ口へ昇格した力士が次に挑む階級です。日本相撲協会の番付表を広げると、下から2段目に細字で無数に名前が連なっており、東西合わせて約200人から250人前後がひしめき合っています。定員が固定されている十両(東西各14枚・計28人)や幕下(東西各60枚・計120人)とは異なり、全体の力士数によって枚数が大きく変動するのが特徴です。
相撲界全体の約4割近くがこの序二段に集中するため、土俵下での競争は極めて過酷です。同期入門のライバルが頭角を現す一方で、何年も序二段を抜け出せずに苦悩する力士も少なくありません。
給料ゼロの真相とは?序二段力士の場所手当と優勝賞金のリアル
関取になると日本相撲協会から毎月高額な月給が支給されますが、幕下以下の力士には法的な意味での「給料」は一切支払われません。そのため、序二段力士の月給は名目上「0円」となります。
その代わりとして支給されるのが、本場所ごとに支払われる「場所手当」です。序二段の待遇は以下の通り定められています。
・場所手当:1場所あたり約8万8,000円(年間6場所で約52万8,000円)
・序二段優勝賞金:20万円(各場所の全勝者、同星の場合は決定戦)
・力士褒賞金:持ち給金に応じた支給(幕下以下は本場所ごとの手当に含まれる形式)
一見すると年収50万円程度では生計が成り立たないように思えますが、力士は所属部屋での衣食住(食事・住居・水道光熱費・遠征費など)がすべて部屋から現物支給されます。日々の生活費そのものはかからない仕組みになっているものの、小遣いや嗜好品、冠婚葬祭の出費などは自身の場所手当や勝ち越し奨励金、後援会からのご祝儀などで賄う必要があります。
【過酷な部屋の生活】早朝稽古から雑用まで|幕下以下力士の1日のスケジュール
序二段力士の日常は、相撲部屋のなかで最も下積みの労力を要求される過酷な環境にあります。相撲界は完全な実力主義・階級社会であり、朝起きる時間から食事の順番、風呂に入る順番に至るまで、すべて番付順で厳格に決められています。
序二段力士の典型的な1日の流れは以下の通りです。
【午前5時00分:起床・稽古開始】
まだ日が昇らない早朝に起き、稽古場の土俵を掃き清め、塩や水を準備します。関取衆が起きてくる前に、序ノ口や序二段の力士同士で激しい申し合い稽古やぶつかり稽古を行います。
【午前8時00分〜10時30分:関取衆の稽古とサポート】
上位力士が土俵に上がると、序二段力士は土俵周りで砂を払ったり、タオルや力水を渡したりするサポート役に回ります。激しい稽古の合間には、胸を出してもらって胸を借りるぶつかり稽古で徹底的に鍛え上げられます。
【午前11時00分:ちゃんこ番・食事・風呂】
稽古終了後、若手力士は厨房に立って部屋全員分の「ちゃんこ」を調理します。風呂や食事は番付上位者から順に行うため、序二段力士がちゃんこを口にできるのは関取衆や親方が食べ終えた後です。
【午後:雑用・買い出し・付け人業務】
昼寝(体を大きくするための重要な日課)を取った後、部屋の掃除や洗濯、買い出しなどの雑務をこなします。関取がいる部屋では、関取の身の回りの世話をする「付け人」としての任務も課されます。
昇格と陥落のメカニズム|7番勝負の「勝ち越し」と三段目との決定的な違い
序二段力士が本場所で土俵に上がる取組数は1場所15日間のうち「7番」です。1日おき、あるいは2日おきに土俵へ上がり、4勝3敗以上で「勝ち越し」、3勝4敗以下で「負け越し」となります。
勝ち越せば翌場所の番付表で地位が上がり、序ノ口からの昇格や三段目へのステップアップが果たせます。反対に負け越せば番付を大きく落とし、全敗などを喫すると序ノ口へ逆戻りする厳しい現実が待っています。
序二段とすぐ上の「三段目」には、明確な待遇と格式の差が存在します。
・履物の違い:序二段までは素足に下駄(または雪駄でも安価なビニール製など)が基本ですが、三段目に上がるとエナメル雪駄の着用や羽織の着用が許されるなど、身なりにおける自由度が広がります。
・場所手当の増額:三段目に昇格すると場所手当が1場所あたり約11万円に増額されます。
・番付編成の基準:三段目は原則として「東西100枚以内(計200人以内)」の枠が固定されており、序二段上位で勝ち越さなければその狭き門を突破できません。
怪我からの再起とドラマ|関取経験者が序二段へ陥落する理由と復活劇
序二段の土俵には、入門したばかりの10代の新弟子だけでなく、かつて幕内や十両で大歓声を浴びていた実力者が立つことがあります。その最大の要因は「大怪我による長期休場」です。
大相撲には公傷制度(怪我による番付据え置き措置)が現在存在しないため、膝の前十字靭帯断裂やアキレス腱断裂などの重傷で連続休場を余儀なくされると、どれほどの実力者であっても場所ごとに番付が急降下し、幕下、三段目を経て序二段まで転落してしまいます。
過去には、大関から大怪我と病気で序二段まで陥落しながら、不屈の闘志で前人未到の復活劇を遂げて第73代横綱に上り詰めた照ノ富士や、幕内から序二段まで落ちて土俵へ戻り再び三役に返り咲いた宇良など、数多くの感動的なドラマが序二段の土俵から始まっています。
泥まみれになりながら基礎からやり直すベテランと、怖いもの知らずで突っ張る若手が激突する序二段の取組には、大相撲の原点ともいえる壮絶な魅力が詰まっています。
【序二段】に関するよくある質問(FAQ)
Q1:序二段力士は全員相撲だけで生活できているのですか?アルバイトは可能ですか?
A1:日本相撲協会の規定により、力士のアルバイトや副業は一切禁止されています。序二段力士の手取り収入は場所手当のみで極めて少額ですが、相撲部屋での衣食住がすべて完全に保証されているため、経済的な持ち出しなしで稽古に専念できる環境が整えられています。
Q2:序ノ口から序二段へ昇格するための条件は何ですか?
A2:前相撲を経て序ノ口に番付された後、本場所の7番勝負で4勝3敗以上の勝ち越しを収めれば、原則として翌場所には序二段へ昇格できます。全勝優勝や6勝1敗などの好成績を残した場合は、序二段のより上位の地位へ大きくジャンプアップします。
Q3:序二段で全勝(7戦全勝)したらどうなりますか?
A3:7戦全勝を達成すると序二段の優勝争いに進出します。全勝者が複数人いる場合は本場所13日目や千秋楽に優勝決定戦を行い、優勝者には賞金20万円と表彰状が授与されます。また、翌場所の番付編成において三段目の上位へ一気に大躍進することができます。
まとめ:過酷な序二段を乗り越えた先に広がる大相撲の夢舞台
大相撲の序二段は、関取という夢舞台を目指す若手力士にとって、心技体を根底から鍛え上げるための最も過酷で重要な修練の場です。給料ゼロ、早朝からの雑用と猛稽古、大部屋での集団生活という厳しい環境のなかで、力士たちは日々自らの限界と向き合っています。
満員の歓声が響く幕内の土俵を支えているのは、午前中の静寂のなかで泥にまみれる序二段力士たちのひたむきな汗です。本場所を観戦する際は、ぜひ開場直後の早い時間帯から土俵に注目し、未来のスター力士や再起を期す力士たちの熱い戦いに声援を送ってみてください。 (出典: 序 二 段(Yahoo!ニュース))